米国のバイデン大統領事務所は、証券取引委員会 (SEC) の仮想通貨政策に影響を与える共同決議案「H.J.Res. 109」が大統領に提出された場合、拒否権を行使する予定であることを発表した。

ホワイトハウスは5月8日の声明で、下院議員による共同決議案「H.J.Res. 109」の可決に「強く反対」していると述べた。

2月に下院に 提出された 「H.J.Res. 109」は、銀行に対し顧客のデジタル資産をバランスシート上に計上し、それに応じた資本を維持することを強制するSECのデジタル資産会計公報「SAB121 」を覆すものだ。SAB121は、銀行によるデジタル資産エコシステムへの参入を事実上制限していると仮想通貨支持派から非難されている。

しかし大統領事務所は、共同決議案がSECによる投資家保護と金融システム全体の安全確保の取り組みを妨害するものだと主張した。

「SAB121は、消費者に多大な損失をもたらした実証済みの技術的、法的、規制上のリスクに対応して発行された。議会審査法を援用することにより、SEC が仮想資産に関連する将来の問題、特に金融安定性への適切な監視と対処能力を不適切に制限する可能性もある。仮想資産のための包括的で効果的な金融規制枠組みを維持するSECの能力を制限することは、金融市場の不安定性と不確実性を招くことになる」

バイデン大統領、SAB121を無効とする決議案に拒否権を発動へ image 0 Source: White House

下院金融サービス委員会の民主党と共和党のリーダーは、5月8日に下院本会議場でこの決議案に対する見解を表明した。共和党のパトリック・マクヘンリー議員は、SAB121は 「金融機関や企業がアメリカ人のデジタル資産を保護する方法にSEC が口を出す」ことを許していると主張し、下院議員に対しH.J.Res.109を支持するよう促した。

「アメリカ人が安全かつ確実にデジタル資産に携われるようにしたいのであれば、銀行は恐らく最良の方法だろう。銀行はアメリカで最も規制の厳しい企業の一つだからだ」とマクヘンリー議員は主張した。

一方で、下院金融サービス委員会のランキングメンバーである民主党のマキシン・ウォーターズ議員は、この共同決議案に反対し、SECの会計規則はデジタル資産市場における透明性を高めるものだと主張。同議員は、この規則は仮想通貨に関連する「特有のリスクと不確実性」に対処することを目的としているとするSECのガイダンスの主張を繰り返し、マクヘンリー議員の取り組みを「有害」で「党派的なもの」だと非難した。

「このような透明性は、FTXのような大手仮想通貨企業の崩壊につながったような、仮想通貨の詐欺や不正取り扱いを防止するのに役立つ」とウォーターズ議員は主張している。

下院での審議の後、H.J.Res. 109 は音声投票で可決されたが、マクヘンリー議員は賛否の集計を要求した。下院議長は、この決議案の審議を「未定の時期まで」延期した。米国憲法では、下院は、バイデン大統領の拒否権を3分の2以上の賛成票で覆すことができる。