上昇か？利益確定売りか？イーサリアムETF承認後には何が起こる？【業界関係者に聞く】

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cointelegraph-jp-eth2024/05/23 08:39

著者:Daniel Ramirez-Escudero

米証券取引委員会（SEC）の現物型イーサリアム上場投資信託（ETF）に関する承認可否期限が5月23日に迫っている。

イーサリアムETFが承認されれば、投資家にとって重要な出来事となるだけでなく、米国の仮想通貨規制の現状に大きな変化をもたらす可能性がある。仮想通貨コミュニティの多くの人々は、SECが現物型イーサリアムETFを承認するとは予想していなかった。しかし、SECが申請者に変更を求め、米国の資産運用会社が申請を修正しているという報道は、現物型イーサリアムETFが承認される可能性があることを示唆している。

ノースステイクのリスクおよびコンプライアンス担当最高責任者であるセバスチャン・ハイン氏は、コインテレグラフに対し、現物型イーサリアムETFが「仮想通貨エコシステム全体と伝統的な金融セクターにとってゲームチェンジャーになる」と語った。ETFアナリストのエリック・バルチュナス氏とジェームズ・セイファート氏は、イーサリアムETFが「ますます政治的な問題になっている」ことを受け、SECがイーサリアムETFに対して180度の転換を見せる可能性があると考えている。

ETFはイーサリアム価格を上昇させるか

現物型イーサリアムETFが承認された場合の予想される影響は何か。ETHの価格は上昇するのだろうか。

仮想通貨投資家の間では、現物型イーサリアムETFが承認されれば、伝統的な市場からの新たな資金流入が期待され、ETHの価格が急騰すると広く考えられている。ハイン氏は「イーサリアムETFの承認は、イーサリアムだけでなく、特に世界最大の資本プールを持つ米国において、仮想通貨市場全体にとって強気の材料となる」と語った。ETFの締め切り前日にETHの価格が20%以上急騰したことは「待機している大量の資金が、重要なきっかけがあればすぐにでも飛び込む準備ができていることを示している」とハイン氏は指摘した。

元シティバンクのソロ・シーセイ氏はコインテレグラフに対し、現在の上昇は「イーサリアムが受け取る可能性のある資金流入を過小評価している」とのべ、大口の資金はまだETH市場に到達していないと語った。シーセイ氏は、ETFが「資産への投資を禁じられていた投資家にゲームに参加する機会を与える」ため、潜在的な影響は大きいと説明した。

しかし、反落する可能性もある。投資分析会社ブロックサークルのCEOであるバセル・イスマイル氏は、「イーサリアムETFの承認はまだ適切に織り込まれていない」とコインテレグラフに語った。イスマイル氏は、ビットコインETFの承認後に起こったような短期的な反落を予想している。

ブリッジDLCリンクのパートナーシップリーダーで元デリバティブトレーダーのピーター・M・モリック氏は、現物型イーサリアムETFの承認が発表されると「噂で買って、ニュースで売る」イベントになるとコインテレグラフに語った。

フィンテック企業バレリウムのCEOであるニック・カウアン氏も反落の可能性があると同意し、「このような取引量の多い動きの後は、しばしば横ばいもしくは小幅な反落が起こり、その後ニュースでの利益確定売りを招くことが多い」と説明した。カウアン氏は「個人投資家の買い手がFOMO（取り残される恐怖）で積極的に買いに入ると、大手機関投資家が持ち分を売却する機会を提供する」とのべた。大口投資家はポジションシフトのために大きなニュースが必要だと指摘し、「FOMOが消えた後、個人投資家が価格水準を維持する力がどれだけあるかが課題だ」と語った。

イスマイル氏は、グレースケール・イーサリアム・トラスト（ETHE）が「依然として100億ドル以上のETHを保有している」と語る。現物型ビットコインETFと同様に、グレースケールの「管理手数料は非常に高く」、ETHEは「手数料が引き下げられるまで、しばらくの間大規模な資金流出をもたらす」と予想している。

シーセイ氏もイスマイル氏に同意し、市場は「間違いなくより顕著な下落を経験する」と考えている。だが同時に、ブラックロックのビットコインETFがビットコインを新たな史上最高値に押し上げる需要を提供したのと同じように、ETFへの資金流入はイーサリアム価格に強気の影響を与えると考えている。

モリック氏は「機関投資家の資金は現物型イーサリアムETFに対して現物型ビットコインETFほど速く流入しない」と言う。その主な理由として機関投資家のイーサリアムに対する認識を挙げた。

プライベートバンクであるジュリアス・ベアのデジタル資産スペシャリストであるマニュエル・ビルガス氏は、「イーサリアムの価値提案はビットコインとは確かに異なる」とコインテレグラフに語った。ビットコインは「リターン向上、価値の保存、または分散投資の可能性を持つ代替資産として、機関投資家のポートフォリオに迅速に組み込まれた」。しかし、モリック氏が述べたように「ETHは多くのユースケースが存在するため、説明がより複雑だ」。現物型イーサリアムETFから安定した資金流入を受けるためには、規制上の分類が明確になり、機関投資家がより安心して投資できるようになる必要がある。

米国の規制の転換点となるか？

どの決定も真空状態で行われるわけではない。仮想通貨を専門とする弁護士のジェイク・チェルビンスキー氏は、政策は政治によって動かされており、仮想通貨が直近の数ヶ月で政治的な戦いに勝利していると強調した。

モリック氏は、最近の上院投票でSECの銀行規則を覆す決定が「現物型イーサリアムETFの迅速な承認に対するセンチメントを変えるのに役立ったかもしれない」と指摘する。

元大統領のドナルド・トランプ氏の仮想通貨に対するスタンスの突然の変化と、現職のバイデン大統領およびSECのゲイリー・ゲンスラー委員長の仮想通貨へのアプローチに対する批判も、規制当局に影響を与える可能性がある。シーセイ氏は、トランプ氏の仮想通貨業界への支持が「SECの資産クラスに対する締め付けを緩和させる可能性がある」と考えている。

SECはETHを証券として分類しようとする可能性がある一方で、過去の訴訟では商品先物取引委員会（CFTC）がETHを商品として分類している。この米国規制当局による一貫性のない分類は、管轄権をめぐる当局間の対立を引き起こし、ビジネスの拡大を難しくしているという指摘もある。

コンプライアンス責任者のハイン氏にとって、ETF承認は「仮想通貨規制における重要な転換点を示し、受け入れと統合への動きを強調する」ものだ。SECは現物型イーサリアムETFの承認に責任を持つ規制機関であるため、ETF承認が「彼らの立場の重要な変化を示し、現在の攻撃的な規制戦略の終わりを示す可能性がある」とハイン氏は考えている。

ETF承認後に何が起こるのか？

仮想通貨市場は、差し迫ったイベントへの期待によって動かされる傾向がある。では、現物型イーサリアムETFが承認された場合、次に何が起こるのか。テレグラムチャンネル「ウェルス・クラフト」を運営する分散型金融（DeFi）投資家のシリルのような市場参加者は、市場が次に期待するイベントがないかもしれないと述べている。